緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2017年

2017/12/7
緩和ケア便り 12月号

第8回 城西緩和ケア講演会〜明日から役立つ緩和医療!!〜が、10月26日(木)午後6時30分より新宿住友スカイルームで開催されました。

『緩和医療 Up To Date』で、東京女子医科大学病院 薬剤部の塚川麻利子先生にご講演いただきました。
WHO方式がん疼痛治療法の三段階除痛ラダーでは、軽度〜中等度の痛みには弱オピオイド鎮痛薬(Step opioid)、中等度〜高度の痛みには用いる強オピオイド鎮痛薬(Step opioid)を用いるよう推奨しています。最近は、薬剤選択肢が増え、「中等度」のがんによる痛みに対して、どのオピオイド鎮痛薬を使用したらよいのか悩む場面も多くなっています。この講演では、「中等度」のがんによる痛みに対して、Step opioidから導入する際の有効性や忍容性、Stepopioidでの導入を検討するのはどのような場合か、2016年の論文などを提示しつつ分かりやすく解説してくださいました。
※ Elena Bandieri, et al: Randomized trial of low-dose morphine versus weak opioids in moderate cancer pain. J Clin Oncol 34: 436-442, 2016

また、今回の特別講演では、埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 教授の大西秀樹先生に『緩和医療で知っておくべき精神症状とその対応』についてご講演いただきました。
がん患者さんの中には、その経過中に精神症状で悩む方もいます。精神症状はご本人・ご家族にとって苦痛であり、意思決定困難、入院期間の延長、自殺率の上昇に関与するともいわれ、適切に対応することが必要です。今回の講演では、主な精神症状として、うつ病・せん妄について解説していただきました。
倦怠感、食欲不振などは身体症状と思い込みがちですが、うつ病の可能性も疑う必要があること、薬物療法や精神療法についてもお話がありました。
せん妄は急性脳機能不全の状態といえます。健忘、失見当、集中困難などがあるとき、せん妄を疑って診察します。原因には、脳自体の問題のほか、脳以外の問題、薬剤などによる影響がありえます。長期間食事量が減少し、ビタミンB1が欠乏したことでウェルニッケ脳症となり、せん妄をきたした患者さんの例についてもご紹介いただきました。臨床型には過活動型、低活動型、混合型がありますが、低活動型は見落とされやすいので注意が必要です。原因の同定と除去、保存的治療、対症療法としての薬物療法について解説していただきました。
講演の最後には、大西先生がこれまでに出会った患者さんのエピソードと共に、患者さんの心的外傷後成長について、家族の苦悩は強いが社会的支援は少なく家族ケアが必要なことについて、ご家族が亡くなった後の遺族ケアも重要なことについてお話しくださり、私たちの支えや目標ともなるような温かいメッセージをいただきました。

文筆:瀧野 陽子(慶応義塾大学病院 緩和ケアセンター)

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