緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2026年

2026/6/8
緩和ケア便り 6月号

慶應義塾大学病院 内科学教室(消化器内科)
石田 典仁

2026年5月の1か月間、がんプロフェッショナル養成コースの一環として、緩和ケアチームで研修をさせていただきました。私は日頃から腫瘍内科医として進行がん患者さんの診療に携わっており、症状緩和やオピオイドの使用に関わる機会も少なくありません。しかし今回、緩和ケアチームの一員として継続的に診療に参加することで、普段とは異なる視点から患者さんやご家族と向き合う貴重な経験を得ることができました。

研修を通じて特に印象的だったのは、身体症状だけでなく、患者さんやご家族の心理的・社会的背景を含めて苦痛を評価し、多職種で共有しながら支援を行うプロセスでした。症状に対して薬剤を調整するだけではなく、患者さんが何に困り、何を大切にしているのかを丁寧に汲み取りながら介入方針を検討していく姿勢は非常に勉強になりました。

また、腫瘍内科外来では限られた時間の中で診療を行うことが多い一方で、緩和ケアチームでは患者さんやご家族の思いをじっくりと聞く機会が多くありました。病状説明や治療選択に対する受け止め方、今後の生活に対する不安など、普段の診療では十分に聞き取ることのできない思いに触れることができたことは、大きな学びとなりました。

症状緩和に関しても、同じ疼痛や呼吸困難であっても、その背景や患者さんごとの苦痛の感じ方はさまざまであり、画一的な対応ではなく個別性を重視した評価と介入が重要であることを改めて実感しました。オピオイドや鎮痛補助薬の選択、投与経路の変更、非薬物療法の活用など、緩和ケア医同士や多職種間で議論を重ねながら診療を進める過程は非常に有意義でした。

今回の研修を通じて、緩和ケアは終末期医療に限られるものではなく、がん診療の早い段階から患者さんの生活や価値観を支える重要な医療であることを改めて認識しました。日常診療の中でも今回学んだ視点を活かし、治療効果だけでなく患者さんの苦痛や生活の質にもより一層目を向けた診療を心掛けていきたいと思います。

最後になりますが、このたび貴重な研修の機会をいただき、日々ご指導いただいた緩和ケアチームの皆様に心より感謝申し上げます。今回得た学びを今後の診療に活かし、より良いがん医療の提供に努めてまいります。

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