緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2010年

2010/09/01
緩和ケアチーム便り

神谷 諭

今回、私は一般・消化器外科の大学院のカリキュラムの一環で、この夏の2ヶ月間を緩和ケアチームの一員として活動させていただきました。とても研修のしやすい環境で、実臨床を通じて多くのことを教えていただきました。

私事ではありますが、今回の緩和ケアチームでの活動期間中に、病院のすぐ近くの歯科に通い治療を受けはじめました。幼いころの恐くて痛い歯科のイメージがあって、今まで避けるようにして生きてきましたが、さすがに外れた詰め物を放置するわけにもいかず、今回ようやくの受診となりました。緊張の面持ちで受診、あの音が聞こえてきて帰ろうかと思いました。しかし実際治療を受けてみると意外にも痛みは少なく、まさに「案ずるより産むが易し」なんだと思いました。

いざ自分が患者の立場となって治療を受ける状況となると、いろんなことが気になりました。何が不安なのか。自分の病状はどうなのか、どんな治療をされるのか、今後どうなのか、お金はどれくらい?、などなど。自分の目の前の患者さんもまた同じであり、癌をもつ患者さんの不安はなおさらであると思いました。普段の診療において、十分な説明の時間を取ることが困難なこともありますが、医師の説明には大きな役割・意味があるということを感じました。また時に診療の内容・意味などに関して主治医に相談しにくいこともあると思われます。緩和ケアチームは原病や治療にまつわる苦痛を緩和する、患者さんの訴えを聴き精神的サポートをする、主科と違う方面からの専門的アドバイスをするという事のほか、これらを通じて患者主治医間のクッションにもなりうるという事など、主科にはできない「安心」につながる幅広いケアが可能であると感じました。

思えばあっという間ではありましたが、私にとって大変実りある2ヶ月間となりました。今後は「根治」「安全」はもちろんのこと、「安心」も提供できる医師となれるよう努力していきたいと思います。

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