緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2022年

2022/05/18
緩和ケア便り 5月号

慶應義塾大学医学部医学研究科 博士課程
がんプロフェッショナルコース1年生
慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室
大野 あゆみ

慶應義塾大学医学部産婦人科の大野あゆみです。がんプロフェッショナル養成コースの緩和医療専門医養成コースの一環で、この1年間緩和ケアチームで研修させていただきました。

これまで私は産婦人科医として癌闘病中の患者さんの診療にたずさわる中で、自分が提案してきた治療は果たしてご本人やそのご家族にとって最善のことだったのだろうか、本当によいことができただろうかと悩むことがありました。患者さんやご家族が向き合う苦しみの前で、自分にできることには限りがあるという現実に直面し、それでも何かできることがないかという思いを抱いて私は緩和医療専門医への道を志しました。

慶應大学病院緩和ケアチームでは、医師や看護師、薬剤師、栄養士など多くのメンバーが一丸となり、患者さんひとりひとりのことを丁寧に考えて診療しています。特にチームの先生方のもつ深い知識や、患者さんの状態を見立てて先を見通す洞察力に、私は多くを学ばせていただきました。加えて、医師の視点からは気づけないようなこと、例えばベッドの寝心地や痛みの出ない動線の工夫、薬の飲み心地などとても大事な視点を、看護師や薬剤師などコメディカルメンバーが発することで、診療がどれほど豊かで底力のあるものになるかを思い知りました。今回の研修経験を通して、緩和ケアは医療の原点だと感じ、より一層緩和ケアがしっかり行える医師になりたいという思いを強くしました。

一方で、緩和チームの先生方が診療の中で戦っている苦難を垣間見ました。上記のような問いに対する答えをもとめて緩和医療の門をたたいた私ですが、そこで目にしたのはどうするのがよいかという安易な答えではなくて、よりよい医療のためにひたむきに患者さんと向き合い、日々葛藤し格闘しつづける先輩たちの姿でした。患者さんの急変に際し、誰より遅くまで病院に残って教科書を紐解きなおし、見立てを丁寧に吟味しなおす先輩の地道さに、答えをわかったつもりにならずずっと問い続けることこそが必要なのだと感じました。医療に臨むものとして、目の前にいる患者さんひとりひとりをしっかり診ることを常に胸にとめ、基本的緩和ケアを徹底していきたいと思います。

緩和ケアチームの先生方、スタッフの方々には、お忙しい中ご指導いただき心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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